老舗薬局を「変身」させる組織マネジメント。ヒーローの大義とロジックが融合する時、組織は唯一無二の強さを手に入れる。

26.02.26

株式会社大賀薬局 代表取締役社長 大賀 崇浩 氏 × 担当コンサルタント 船木 勇佑

[会社名]株式会社大賀薬局

[所在地]〒812-0011 福岡市博多区博多駅前3-9-1 大賀博多駅前ビル3F

[業 種]医薬品・化粧品・化粧雑貨・生活雑貨小売、処方せん調剤 

[資本金]5,000万円

[従業員数]1,434名(うち薬剤師594名)※パート・アルバイト含む

[会社ホームページ]https://www.ohga-ph.com/

創業120年、福岡の街と共に歩んできた株式会社大賀薬局。その三代目・大賀崇浩氏は、独自の感性とエンターテインメントをビジネスに融合させ、業界に旋風を巻き起こしてきました。しかし、その華やかな躍進の裏には、組織崩壊の危機と、それを乗り越えるための「血の通ったロジック」がありました。
いかにして個人の感性に頼った経営から脱却し、1,400人を超える巨大組織を一つに束ねたのか。変革の軌跡を辿ります。

「100年の信用」を武器に。商社マンが選んだ覚悟の道

――華やかな商社マンから一転、なぜ家業に戻る決断をされたのでしょうか。

大賀氏: 1982年生まれの私は、就職氷河期の真っ只中に三谷商事へ入社しました。BtoBビジネスの最前線、生コンクリートの卸売に明け暮れる日々は刺激的でしたが、心のどこかで「自分自身の足で立ちたい」という起業への渇望もありました。

そんな時、父からかけられた「戻ってこないか」という言葉。迷う私を動かしたのは、大学の先輩からの痛烈なアドバイスでした。

「ゼロから起業するのは並大抵ではない。君には100年以上の歴史と、積み上げられた『信用』という最高の資産がある。それを利用して、君にしかできないことをやればいい」

この言葉で、私は家業を「守るべきもの」から「新しい挑戦のプラットフォーム」へと捉え直したのです。

年間80人の離職。組織崩壊の淵から這い上がった「現場力」

――入社後、待ち受けていたのは想像を絶する現場の疲弊だったそうですね。

大賀氏: 調剤部門に異動した当時、状況はまさに「崩壊寸前」でした。年間80名の薬剤師が去り、現場は慢性的な人手不足で疲弊しきっていました。出店どころか、日々の店舗運営すら危うい。

私はまず、自ら全国の大学や薬学ゼミナールへ足を運び、泥臭い「採用の仕組み化」に心血を注ぎました。

結果: 年商ベースで100億円規模の上積みを達成。現場を立て直した自信が、のちの「攻めの経営」の原動力となりました。

現場の再建: 自分が先頭に立って信頼関係を築き直し、一気に80名以上の採用に成功。

攻めの開発: 人員不足を解消した直後、開発部門を組織化。ドクターへの徹底したアプローチにより、40店舗以上の新規出店を実現しました。

「オーガマン」は単なるコスプレではない。戦略的「大義」の構築

――大賀社長といえば、自ら扮する「オーガマン」が有名です。一見、奇抜に見えるこの戦略の真意とは?

大賀氏: 私の根底には、幼少期から憧れた「ヒーローになりたい」という純粋な想いがあります。しかし、ビジネスにおいて「単なるコスプレ」は無意味です。

薬剤師という職業を子供たちが憧れる職業のランク内に押し上げること、そして、飲まれずに捨てられる「残薬」という数千億円規模の社会課題を解決すること。この重いテーマを伝えるには、エンターテインメントの力を借りた「正義の味方」という分かりやすい大義が必要でした。

しかし、社長が「ヒーロー」として旗を振るだけでは、組織はついてきません。この「点」の打ち方を「線」にするために必要だったのが、ハイブリッジマネジメントによるロジカルな統治でした。

感情を排し、公平性を追求する。「物差し」が組織を解放する

――ハイブリッジマネジメントを導入し、具体的に何が変わったのでしょうか。

大賀氏: 組織が急拡大する中で、私の感性だけではビジョンを浸透させることに限界を感じていました。そこで導入したのが、私情を挟まない徹底した「評価の物差し」です。

会議の変革: 伴走型のコンサルティングにより、週次会議の質が劇的に向上。どこで何が詰まっているのかが可視化され、即座に手を打てる機動力を手に入れたのです。

「数字で測れない仕事」への対峙: 導入当初は反発もありました。しかし、私は「判断材料は全員で持ってくるが、決めるのは私だ」というスタンスを貫きました。

属人性の排除: 「あの人でなければ分からない」という聖域をなくしたことで、人事異動がスムーズになり、組織に健全な新陳代謝が生まれました。

事業承継に悩む「次世代リーダー」への提言

――今後の展望と、同じ悩みを抱える経営者へのメッセージをお願いします。

大賀氏: 今後はAIを活用した接客評価など、さらに仕組みを加速させていきます。 特に事業承継を控える二世・三世の経営者の方々に伝えたいのは、「プロの伴走者」を持つことの強さです。先代との関係性や社内の反発に悩む場面でも、ロジカルな根拠があれば迷わず突き進めます。

私の提唱する「ヒーローマーケティング」の根底にあるのは、強固な組織変革の物語です。社長自らが大義を掲げ、変身する。それを裏付けるロジックさえあれば、どんな歴史ある組織でも劇的に、そして美しく変わることができると確信しています。